本文へ

 

「IT時代によせて」

2001.2.15:コラム…「CHRニュース」Vol.9より

●IT時代

この年齢になって、まさかこんなややこしい機器を操作できるようになるとは、思ってもみませんでした。

ワープロは必要に迫られて、最初は借りもので覚えて仕事に活用し、その後自分のものを2台購入し、すべて我流で使っていました。後から購入したワープロはいろいろな機能がついていましたが、相変わらず必要最低の機能だけしか使えませんでした。そろそろ3台目を買わなければと思っていましたら、「今更ワープロじゃありませんよ」との言葉に「そうかもしれない」と思い、またある人から「これからはカウンセリングもパソコンを使う時代です」と言われ、すっかりその気になり、機種選びから設定まですべてお任せで、CHR研究所にパソコンがやってきたのは、平成8年のことでした。

「ワード?エクセル?」「クリックって何?」「それは日本語で言うと何?」わからないことばかりでしたが、その年、第1回日本産業カウンセリング学会で発表することになって、なんて便利な賢い機械かしら?と驚いてしまいました。アンケートの集計からグラフ作りまで本当に助けられました。助けられたのは機械だけではなく、未熟な私の技術を心配して、または私のSOSに応えて、何人もの受講生が仕事帰りや休みの日に来て、資料を作るのを手伝ってくださったのです。操作する手元と画面をじっと見ていて、「今何したの?どこをさわったの?」と質問攻めで、迷惑をかけながらおぼえました。

今ではEメールはあたりまえ。仕事で必要な書類を添付で送って便利さを最高に甘受しています。その後ホームページもつくりましたし、昨年はドメインも取得しました。2台目はノートパソコンにしましたが、持ち運びができてこれも大変重宝し、そろそろ3台目を考える時期にきています。何が何だかよくわからないまま、人様のアドバイスを素直に受けているうちに、ITの波にうまくのっていました。


●コミュニケーションの難しさ

 ドメインを取ったとき、IT関係の会社の若い人が何度か来て、新しいアドレスが使えるように設定をしたり、その他いろいろ機械の操作をしてもらう場面がありました。仕事中もしばしば携帯電話が入り、この業界の忙しさを目の当たりにみる思いでした。ところが、私が質問することや要求することが、なかなか通じないのです。まじめに仕事にも取り組み、穏やかに対応してもらえるのですが、なにしろ意思の疎通がうまくいかない体験をしました。機械の操作は一流だけど、こちらの要求することが通じないのは困ったものだと思いました。


●IT業界と傾聴研修

最近、こうした若いSEを対象にメンタルへルス研修を依頼されることが多くなりました。一日中機械に向かって人と交流することもなく、仕事をしている人の中から、心の病にかかる例が増えていて、企業でも何とか早く手を打ちたいと考えるようになった為です。

機械に向かって仕事をしている時には問題はないのですが、リーダーとなって後輩の指導を任されると、コミュニケーションをとるのが苦手なのが浮き彫りとなり、うまくいかなくなる人もでてきます。これらのテクノストレスはもう何年も前から言われていることですが、ここ数年の急激なIT革命で業界が拡大し人数が増えたことで、問題が表面に現れたのでしょう。また、最近の傾向として、SEが直接お客さんに会って、相手の要望を聞くようになり、これが苦痛でストレスになるようです。

メンタルへルスの研修の中に、傾聴の技法を入れて欲しいという要望も、こうしたところからきたのですが、打ち合わせの時この話をききながら、前述の体験が脳裏に浮かんできました。まさにこの傾聴能力が必要だと実感しました。分かってもらえないとそれだけ時間の無駄にもなるのです。


●コミュニケーション能力は家庭から

 塾通いが忙しく、勉強一筋で友達と遊ぶこともなく育ってきた若い人に、特に見られるのがこのタイプです。勉強ができても、コミュニケーションが苦手では有能とは見られません。本人が望んでこうなったわけではなく、親の教育方針の犠牲かもしれません。家庭教育の大切さを痛感しています。

このページのトップヘ