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「なぜ?少年犯罪の多発」

2000.9.1:コラム…「CHRニュース」Vol.7より

●なぜ?少年犯罪の多発

今年に入って少年による残虐な事件が相次いでいます。あまりに多すぎて数ヶ月前のものはすでに忘れかけているものもあるくらいで、恐ろしくなります。

 それらの事件をおこした少年の人物像は、マスコミによると"優等生""おとなしい""イイ子""信じられない"などほとんど同じ言葉で表現されています。新聞を走り読みするくらいで、一つ一つの事件を丁寧に調べているわけではありませんが、それでも育った家庭の様子から「あゝ、やはり」と頷かせるものを感じます。

 少年の事件のみでなく、他の様々な事件でも言えることですが、マスコミの報道が事件を連鎖的に引き起こしているのではないかと思ってしまいます。現代人が特に凶暴になった訳ではなく、昔から事件はあったもののマスコミが発達していなかったために、全国に知らされていなかっただけではないでしょうか?ただ現代は犯罪をおこす少年の家庭が、どこにでもある普通の家庭というところに私たちは驚き、恐怖感や不安感を倍増させていると思います。

●ACはほどほどに

 交流分析理論によると、心の働きは5つに分類されそのうちの一つがACだということは、皆さんよくご存知ですね。人間関係をスムーズにするためにはACの働きは不可欠ですが、必要以上にACにエネルギーを使いすぎると、様々な問題があらわれます。

 一つは最近話題の心身症です。ストレスが原因で身体に様々な症状が表れるのですが、医療関係の本によりますと、実に広範囲な病名が載っています。8月に開いた「第19回楽しく学ぶ交流分析」では"女性の心の健康"を取り上げましたが、代表的な摂食障害や最近特に増えてきた買い物依存症についても興味深く学ぶことができました。

 もう一つがいわゆるキレル状態です。少年による事件もこの状態ではないでしょうか?たまりにたまった感情が暴発する時、自己コントロールがきかない状態になるようです。ただキレタ時大きな事件に発展するのが、現代の特徴かと思います。昔から問題行動をおこす人は子どもも大人も沢山みてきました。

●家庭の役割

 子育てが本当に難しくなったと思います。家庭にだけ責任を問うことはできなくなりました。家族カウンセリングの理論でいうところのシステム論からみますと、学校・社会・家庭のすべての関係性から見直さなくては問題の根を絶つことは不可能です。とはいうもののその中にあって我が子が同じような問題をおこさないようにするために、今私たちにできることから始めるしかありません。

 交流分析のストローク理論を知ったとき、私は母親としてもっと早くに出会いたかったと思いました。三人の息子を私は誰にも負けないくらい愛情を込めて育てたつもりですが、今振り返ってみますと自分の感情でマイナスのストロークを与えたことも沢山思い出します。人生早期の親の関わりかたが子どもの人生にこれほどまでに影響を与えるものとは思ってもいませんでした。だからこそ私が「母親笑顔教室」を大切にしているのです。

●親の姿勢

 朝日新聞の家庭欄に連載されている特集記事の中に、興味深いものを見つけました。強盗未遂で逮捕され、保護観察処分になって戻ってきた17歳の息子に対して、父親が手紙で気持ちを伝える方法で、ほのかに明るい兆しがみえてきたというものです。最初は「もし何かあったら息子を刺して自首するか自殺しょう」とまで思いつめていた父親が「価値観を押し付けず、一人の人間として人格を認めてあげてください」という弁護士の言葉に「子どもは自分の所有物ではない」と気付いたところから、戻ってこない夜会話のかわりに見守る親がいるのだという気持ちを伝えるために、書き出したということでした。

 この"人格を認める"行為が無条件のプラスのストロークです。どのような子どもに対しても親がこの気持ちを持ちつづけ表現すれば、現代のすさんだ子どもたちの心にも伝わると思います。私がクライエントの話しをきいていつも感じるのは、親がイイ子を求めすぎるということです。条件付きのプラスのストロークばかり与えられた子どもは、本当の親の愛情を実感として受け止めていません。ACの高い人はこうして育ってくるのです。子どもはもちろん誰に対しても、無条件のプラスのストロークを与えられる人格の持ち主になることが、学ぶ最終目標だと思っています。

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