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「健康な親子関係『笑顔が育てる子供の心』」

1990.3.10:寄稿…「広報浜岳」(平塚市立浜岳中学校PTA)第80号

●子供にはお母さんの笑顔が必要

 数年前になりますが、NHKテレビで赤ちゃんを対象にした実験を見たことがあります。

衝立の陰に隠れたお母さんが顔を出して赤ちゃんの反応をみるものですが、お母さんがにっこり笑って優しく呼びかけると赤ちゃんは全身で喜びを表わし、逆に怒った顔をのぞかせると不安そうな顔をして今にも泣きださんばかりの表情になるのです。

 赤ちゃんは本当に天使だと思います。この天使を見て心から微笑まない人は殆どいないと思いますが、中にはおむつを換える時もお乳を飲ませる時にも、無言で無表情で、機械的に役割を果たしているだけという感じのお母さんもいます。これでは敢えて無表情な、人に無関心な子供を育てているのと同じことです。

 多くのお母さんは、言葉の通じない赤ちゃんに、優しく話しかけたりあやしたりしながら、おむつを換え、ミルクを飲ませますが、この何気ないしぐさが、赤ちゃんにとっては欠かすことのできない心の栄養となるもので、ここでしっかりと母子の信頼関係ができあがるのです。

 赤ちゃん時代にはたっぷり与えられた笑顔が、何故お母さんの顔から消えていくのでしょう。笑顔が必要なのは赤ちゃんだけでしょうか?

 中学生はまさしく思春期の真只中にあり、心身共にゆれ動き、不安定な時期です。その上、小学校の時よりも更に成績や偏差値に苦しめられ、友達関係も複雑になり、常に神経を使っているのですが、この疲れた神経を癒すのは、暖かい笑顔を持つお母さんのいる家庭ではないでしょうか。


●笑顔ができない原因は子供の成績?

 私が主宰している「母親笑顔教室」やカウンセリングなど、仕事を通して多くの母親と接し、気持ちを聴く機会が多いのですが、笑顔のできない原因の筆頭となるのが、子供の成績のようです。それでは成績のよい子供を持つ親が笑顔でいられるかどうか、これがまた疑問です。

 現在どんなに悪評で改善を叫ばれても、偏差値教育はしばらくは続くでしょう。偏差値重視の教育に強い体質の子供もいれば、押し潰されて悲鳴を上げている子供も多いと思います。学校や塾で偏差値によって優劣を付けられることは仕方ありませんが、ほっとしたい家庭まで、偏差値故の厳しい親の顔を見なくてはならない子供の気持ちにもなってあげてほしいと思います。


●笑顔の素敵なお母さん(親)でいるために

 親までが、偏差値を物差として子供を見るのは悲しいことです。いろいろな物差を用意して、一人ひとりの個性をみつけ出せるのが親ではないでしょうか。別の物差でみれば素晴らしい才能なのに、認められぬが故に、問題行動をおこす子供も出て来るのです。

 子供の成績で、親が一喜一憂するのはおかしいとは感じませんか。良い点をとれたのは、親の努力ではなく、あくまでも子供の努力の結果です。逆の場合もしかりです。子供が偏差値の高い学校に入ったからといって、親が自慢する必要もなく、反対の場合、卑屈になる必要もありません。それぞれが一緒に喜び、希望をもたせることのほうが大切です。

 学校の成績がそのまま通用しないのが現実の社会です。頭ではみんな良く知っていることですが、本当に分かるのは、子育てがすっかり終わってからのようです。その時になって初めて、これならもっと気楽に育てれば良かったと言われますが、それでは遅いのです。ひょっとして我が子が大人物になるのを妨げていたかもしれないのですから。

 母親の笑顔をいつまでも思い出せる子供は、少々道をはずれても必ず戻ってきます。落ち込んでいる子供、問題を起こした子供には、言葉よりも笑顔の方がずっと効果的です。

 笑顔に偏差値を付けましょうか。心から出る笑顔を!

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